三井住友海上火災保険、ベイカレント・コンサルティングを経験。採用ユニット責任者として約300名の中途採用を実現し、当時最速でプロデューサーに昇格。2025年参画。
地方銀行で法人融資を担当し、取引先の資金繰りや設備投資の相談に乗っていました。仕事自体にやりがいはあったのですが、担当していた地場企業で事業承継の話が持ち上がったとき、融資の判断はできても、その会社の価値をどう評価し、どう次の世代へ引き継ぐかという場面では、自分の役割が「お金を貸すかどうか」で止まってしまうことに気づきました。財務諸表を読み込む力はあるのに、それを企業価値そのものの議論に使えていない。もう一歩踏み込む仕事がしたい、と考え始めました。
M&Aや事業再生を扱う領域なら、融資審査で培った財務を読む力を、企業価値の評価という別の目的に転用できると考えました。事業会社の経営企画や証券会社も検討しましたが、私が積んできた「返済可能性を財務から見極める」という視点は、デューデリジェンスで対象会社のリスクを洗い出す作業と方向性が近い。同じ財務データでも、貸し手の目で見るのと、価値算定の目で見るのとでは問いが変わります。その問いの切り替えを本業にできる環境として、FAS系が一番しっくりきました。
銀行から未経験でコンサルに移るのは無謀ではないか、という不安が大きく、複数のエージェントに相談しました。多くは「銀行出身は財務に強いので大丈夫」と一般化するだけでしたが、ラフロジックのコンサルタントの方は「財務に強い、では評価されない。融資審査のどの動作が、DDのどの工程に対応するのかを言語化しましょう」と、具体的な翻訳作業に付き合ってくれました。決め手は二つで、経験の棚卸しを一緒に構造化してくれたことと、FAS特有の選考で問われる点を事前に整理して渡してくれたことです。
職務経歴書の書き換えと、それを使った面接対策です。最初に書いた経歴書は「融資案件を年間◯件担当」といった、銀行の中でしか通じない実績の羅列でした。コンサルタントの方から「これは審査能力の証明になっていない」と指摘を受け、案件ごとに自分が何をリスクと見て、どんな根拠で判断したかを書き直しました。その上で、模擬面接では「あなたが融資を見送った案件で、後から振り返って評価が甘かった点は」といった、判断の質を問う質問を繰り返し受けました。貸し手としての経験を、価値評価の言葉に翻訳し続ける訓練になりました。
未経験入社なので、正直、条件面は提示された金額を受け入れるものだと思っていました。ただコンサルタントの方から、私の財務スキルはFASでは即戦力に近い部分があり、その点は評価対象として交渉できると助言をいただきました。実際に、これまでの審査経験を裏づけとして丁寧に説明いただいた結果、当初の想定より踏み込んだ水準で条件を設計してもらえました。金額の多寡そのものより、自分の経験が新しい領域でどう値づけされるのかを客観的に知れたことが収穫でした。
複数の選択肢の中で、財務デューデリジェンスと事業再生の両方に関われる幅を重視しました。融資時代に見てきた地場企業の姿と、FASが扱う案件がつながっている実感があり、自分の原体験を活かし続けられると思えたことが大きいです。加えて、面接で会った方々が、財務の読み方について銀行出身の視点をむしろ歓迎してくれたこと。自分の経験が否定されるのではなく、別の使い道が用意されている環境だと感じられた点が、最終的な決め手になりました。
銀行出身だと「財務に強い」で通用すると思いがちですが、それだけでは差別化になりません。大事なのは、自分の日々の審査動作を、志望先の仕事の言葉に翻訳できるかどうかだと思います。私は融資の判断プロセスを一つずつ分解して、それがデューデリジェンスのどの工程に当たるのかを言い換える作業に一番時間をかけました。地道ですが、この翻訳ができると、未経験でも「経験を持ち込める人」として見てもらえます。財務の素地は必ず武器になるので、その使い道を語れるようにしておくことをおすすめします。